序盤、中盤と順調に「サブテンペース」で進んでいた「100kmオンラインチャレンジ」も、70km以降から急激に失速し、80km地点で「8時間オーバー」と、ついにサブテン達成に赤信号が灯ったのでありました。
《80〜90km》 2:14:42(キロ13:28) トータル 10:20:23
タイム的な目標は失いかけましたが、80kmからクラブ代表のスコップさんとの「共走」が始まります。
もう「競走」はしなくてよい。
共にゴールを目指していこうではありませんか!
しかし、ここからの3.3kmは、今回の中で最も苦痛な区間でありました。
走っているにも関わらず、もう歩くぐらいのスピードしかない。
キロ10分を超えるようになると、「ホントにこのままで100km走ることはできるのだろうか?」と、自分が信じられなくなってきます。
恐らくスコップさんも、一緒に走りながらかなり心配されていたのではないでしょうか?
82kmを過ぎると、目の焦点が合わなくなってきます。
なんとか真っすぐ進んでいますが、歩幅は50cmぐらいが限界です。
「あ、このままだと倒れるかな?」
テレビで見る箱根駅伝で脱水症状で棄権する選手と、自分の姿がダブって見えました。
むむ、これは本気でヤバい。
こんな大会でもない遊びで倒れて救急車なんて呼ぶなど、医療従事者の端くれとしては絶対にあってはならないことだ。
人様に多大なる迷惑をかけるような事態だけは避けなくてはならぬ!!!!!!!!!
「あと500mで駐車場だ。とりあえず車の中で休もう。その後のことは休んでから考えよう」
それだけを考えて、モーローとした頭でフラフラしながら、必死に駐車場めがけて進みます。
一歩、一歩、ヨタヨタした足取りながら、どうにか駐車場にたどり着くことができました。
このときはすでに100kmなどどうでもよく、とにかく救急車を呼ぶことだけは避けれてよかったという安堵感しかありません。
安堵感からそのままふらっと行きそうでしたが、自分の車の中で休むまでがお仕事です。
応援されていたクラブの皆様の心配そうな顔をよそに、一目散に車まで歩き、ドアを開け、シートを倒して、エアコンをマックスに冷して、倒れ込むように眠りました。
「あー、助かった。生きてる」
麦茶をがぶ飲みしながら15分ぐらい休んだでしょうか。
気がつけば、少し頭の中がクリアになり「あ、なんか行けそうかな」と。
車から降りて、時計を見ます。
時刻はまだ14時前。
サロマの制限時間である18時に対して、まだ4時間以上も余裕があります。
スコップさんが心配そうに私を見つめる中、力強く宣言します。
「ここからは歩きます!」
ここで完全に投げ出すのはもったいない。
残り17km、這ってでもゴールにたどり着いてやろうじゃないか。
スコップさんと共に「ウォーキング」が始まります。
このときは残念とか悔しいとか、そういう気持ちは全くありませんでした。
まだ前に進めること、一緒に進んでくださる素晴らしい仲間がいることに「ありがたい」という気持ちが強かったです。
無の境地で、淡々と、今できることを今できるペースでやっていくのみです。
86km過ぎで休憩。
このときは、もう固形物を食べられるぐらいに回復して、スコップさんが用意してくださった「二幸の団子」をパクっと平らげます!
「う、うまいっ!!!」
……と、言いたかったところですが、味覚はあんまり回復していず、「あれ?味がない」ってのが正直な感想でした。
それでも残り約14kmの燃料には十分です!
団子パワーで、先に進んでいきましょう。
休憩後は、体調もかなり回復し、早歩きモードにしていきます。
このままダラダラ歩くのではなく、やはり一分一秒でも削り出して行こうと。
みやすのんき先生の歩き方の本を思い出しながら、小股でスタスタと、股関節から脚を動かして歩きます。
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この本は、ウルトラマラソンで潰れて歩くとき、ものすごく役立つ本だと思います。
多くのウォーキングの本は「大股で歩け!」と書かれているものが多いですが、ウルトラマラソンで筋損傷が激しいときに、大股で長い時間歩くなんて無理です。
あまり末端部の筋肉を使わないように、小股でスタスタ歩くのが、ウルトラマラソンで潰れてからの正解だと思います。
87km過ぎからは「キロ10分」と、80km過ぎで潰れてからの走りよりも速いスピードで歩くことができました。
今振り返れば、80kmからも無理せずに早歩きに徹すれば、車の中で休むような大ブレーキはなかったかなあとも思います。
そこは今後の課題として、受け止めておきましょう。
《90〜100km》 1:30:20(キロ9:02) トータル 11:50:43
90kmでちょっと長目の休憩を入れました。
レッドブルを注入して、エネルギーを満タンにします。
7kmぐらい歩いて、大分、体調は復活しました。
脚はどこも痛いところはありません。
リアルサロマの「13時間以内」という制限時間には余裕で間に合いますが、人間、体調が戻ってくると欲が出てくるというものです。
このまま残り10kmを歩き倒すと12時間超えちゃうなあ。
でも走りを交えれば、12時間以内にはゴールできるはずだ。
どうせなら少しでも高い目標を持った方が、このままダラダラ歩くよりも、気持ちにもハリが出る。
「よし!走ろう!」
ウルトラマラソンには「復活」があります。
うん、諦めないでよかったよ。
キロ7分ぐらいのペースでありますが、「一体どこにこんな体力が残っていたんだ」ってぐらいに自分でも驚くような足取りで走れるものなのですから、人間の体というものは不思議です。
恐らく一緒に走っていたスコップさんもビックリされていたのではないでしょうか?
とは言え、やっぱり3.3kmのランニングコースを一周して、またふらつきが出てきましたね。
無理はやめておきましょう。
残り2周。
1周は戦略的に歩くことにして、最後の1周だけはどんなことがあっても走るという作戦で行くことにしましょう。
それでも「12時間」という目標には十分間に合います。
まずは歩きます。
歩くと言っても「キロ10分ペース」でスタスタ行きます。
16時を過ぎて、日差しは弱く、風は涼しいを通り越して、ちょっと冷たく感じるようになりました。
もう体調的には大丈夫です。
相変わらず、どこも痛いところはありません。
ラスト1周へのエネルギーを蓄えるべく、しっかり歩きましょう。
小休止を取って、ラスト1周。
自分の中では「最後の花道」のつもりで走ります。
リアルサロマで言えば、ワッカを抜けて、常呂の市街地に入ったような気分でしょうか。
キロ7分程度のスピードではありますが、ここに来てしっかりとした足取りで走れることに「ありがたい」という気持ちしかありません。
ここまでいっぱいいっぱい辛いと思うことがあったはずなのですが、どういうわけか、ここまで来ると「すべてよきこと」と思えてしまいます。
ウルトラマラソンって、人生に似てるかもな。
最初は勢いだけで突っ走り。
途中で壁にぶつかり。
色々な方の援助で壁を乗り越え。
最終的には、穏やかな気持ちでゴールに向けて進んでいく。
人生のゴールである「死」を迎えるとき、このような穏やかな心持ちになれるのだろうか?
今際の際に、今日のように「ああ、よくやったな自分」って思うことができるのだろうか?
そんなことを思いながら、色々な方を巻き込んだ、今回の個人的なチャレンジも、無事11時間51分でゴールを迎えることができました。
ちょっとほろ苦く、ちょっと自分自身を誇らしいと思える、そして気象条件を含め、多くのものや人に支えられ、感謝の気持ちでいっぱいの、そんな100kmの道のりでした。
ここまでご清聴ありがとうございました。
(次回、大反省会につづく)