レース開始から16時間が過ぎました。
制限時間の24時間までは、残り3分の1。
そして、この時点での走行距離は120km。
目標の100マイルまでは、残り4分の1。
4本目のレッドブルを投入して、「8時間40km」前に進んでいこうではないか!!
7時になって「8時間の部(個人・チーム)」のスタートが始まります。
8時間の部にはクラブのメンバーも参加しており、見知った顔を見て、激励の言葉をかけられ「ホームの地の利」を感じます。
深夜から早朝のコース上は、少数の「生きる屍」がヨロヨロしている感じでしたが、8時間の部が始まって、コース上に一気に活気が溢れてきます。
特にチームの部のランナーは、キロ4ぐらいのペースでビュンビュン飛ばしていて、とても同じレースに参加しているとは思えません。
8時間の部が始まれば、みんなにつられてちょっとは走れるんじゃないかと思ったが、やっぱ無理でしたね。
下り坂を利用してちょっと走り出しても、100mぐらいでまた歩き出すという体たらくでした。
そんな中、クラブメンバーの皆さんや、はじめましての「はてなブロガー」タマ子さんに暖かい声がけをいただき、「ゆっくりでもいいからとにかく前に進もう」と、心が折れることはありませんでした。
さてさて、歩きながら足りない脳みそを回転させて、戦略を立てましょう。
残り8時間で40kmなので、求められる速度は「時速5km」。
ちょっとした早歩きのペースです。
そう考えると楽勝のように思えるかもしれませんが、何があるかわからないのがウルトラマラソン。
完全に脚が止まることも考えられるので、行けるうちに距離を稼ぐにこしたことはありません。
で、私の決めた作戦というか願望は
「4時間で24km、残りの4時間で16km」
と、11時までにできるだけ早歩きして、残りの4時間は普通に歩いても大丈夫ってところまで「貯金」を作っておくことでした。
ギリギリのラインだと精神的な余裕がなくなるので、少しでも11時までにマージンを持たせて「絶対大丈夫」という安心感を得たいところ。
今の歩行ペースは、だいたいキロ9〜10分。
1周ペースにして15分ぐらい。
ということは、7〜11時の4時間で「1周15分ペース」で進むと、計算上は16周(25.2km)行けるわけだが、トイレや補給等、休憩時間を考慮に入れると、15周(24km)が現実的な数字になるだろう。
よし、作戦は決まった。
そうと決めれば、あとは体力の消耗を最大限に抑えながら、ひたすら歩き倒すべし!
「もう走らなくても大丈夫」って思えると、ちょっとホッとしましたね。
ただ歩くと言っても「競歩チック」なスタスタ歩きは、意外と体力を消耗しますね。
相変わらずジェルで補給するのだが、もうジェルの甘ったるさにも飽きてきた。
とは言え、胃腸障害で固形物を食べるのは無理なので、ジェルを流し込むしかない。
口に入れるのは食事ではない、栄養なのだ。
つべこべ言わずに、水と一緒にジェルを流し込むのだ。
あと、この時間帯辺りから、喉の乾きを妙に感じるようになりましたね。
電解質補給として、塩分たっぷりの「エブリサポート」を約1時間に1本のペースで摂っていたのだが、水で溶かすのがめんどいので、顆粒を口に入れてから、水で流し込むって戦法を使っていたのだよね。
多分、それがよくなかったのでしょう。
冷静に考えれば、エブリサポートは「塩のかたまり」なんだから、あんなもの水に溶かさず直接飲んだら、のどにダメージが加わるに決まってる。
終盤からはエブリサポートは封印して、給水は、ひたすらオフィシャルエイドにある麦茶を中心に行いました。
ただ、これだと電解質は足りなさそうなので、胃はやられてあんまり受け付けないですが、スポーツドリンクも強引に飲みました。
今思えば、ちょっと面倒でも「エブリサポートを麦茶で溶かす」ってのが「ミネラルと電解質」が同時に取れて、しかものどの負担がかからずよかったんじゃないかって気がします。
さて、最大の危機は9時ごろにおとずれました。
眠い!!!
もう身体が眠さに支配されて、今まで以上に身体が動かない。
身体が動かないばかりではなく、精神もおかしくなってくる。
「あ、ひょっとしたらダメかも」と、初めて弱気になりました。
ここで、同じ24時間の部に参加されているクラブのNさんから声をかけられます。
「私、6分寝てました」
Nさんは、この時間になってもゆっくりながら、しっかりとした足取りで走られています。
「そっか、眠たければ寝ればいいんだ!」
そういや、UTMFに参加されたチャーリーさんもブログに「3分間睡眠のすすめ」を書いていたなあ。
でもって、決定的となったのは、応援に来られていたクラブ代表スコップさんとの会話。
ス:「おい!大丈夫か?」
ゴ:「あんまり大丈夫じゃないです」
多分、これでスコップさんは「この人大丈夫か?」と不安になったかもしれませんが、逆に私は冷静になれたような気がします。
「大丈夫じゃない」と声に出すことによって、「あ、自分大丈夫じゃないんだ」と認めることができました。
大丈夫じゃないんなら、すぐに休むべしと、椅子に座って3分寝て、アミノバイタルの赤いのでエネルギー補給しました。
この「3分の休憩」は大きかったです。
再び進みだしたとき、明らかに頭はクリアになり、ネガティブな考えが湧き出ることなく、無我の境地で突き進むことができました。
今思えば、この短い休憩が勝負の分かれ目でした。
ここで思い切って休まなかったら、「ダメかも?」というネガティブな思考に飲まれ、メンタル的に追い込まれていたことでしょう。
一旦リセットの場を与えるきっかけを下さった、クラブのNさん、チャリーさん、スコップさんには本当に感謝しています。
ひたすら4時間早歩きをし続けて、11時。
ここまでの周回数は90周(144km)。
計測スタッフの方から「残り10周です!」と、声をかけられ、いよいよ100マイルへのカウントダウンが始まるのでした。
5本目のレッドブルを燃料に、最後の10マイルへの道のりが始まります。
(つづく)