ついつい「なんとかなるだろう」と申し込んでしまった「十勝岳トレイル in かみふらの 55km」。
冷静に考えたら、「山の中でフルマラソンを超える距離を走る」など、なんとかなるものではないのだが、うっかり申し込んでしまったのでなんとかするしかない。
「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」ということなので、まずは「馬を射る」ことが必要だろうと、つべこべ言わずに「山岳パートの下見」に行くことにしました。
「山岳パートの下見」が「馬を射る」ことにあたるのかは知らんけど。
あらかじめ今週の木曜に年休を取っていて、当初はサイクリングでもして過ごそうと思っていたが、こういうものは決めたらさっさと実行するに限ると、電撃的に山に行くことにしたのであった。
山が俺を呼んでるぜ。
ヤッホー!
休暇力の低い私にとって、この日が最初で最後の下見のチャンスなのであった。
問題は山に行くまでに、車で片道5時間以上かかることなのだな。
北海道はとにかく広いのである。
私のように北海道の端っこの方に住んでいると、どこへ行くにも遠くて億劫になるのだよね。
とりあえず、水曜に定時ダッシュして、帯広へと車を走らせます。
んで、安いドミトリーで寝る場所だけ確保して、いびきの合唱に悩ませられながらも3時起床で、いざ十勝岳へ!
明らかに寝不足であるが、そんなことは言ってられず、カフェインの力を使いながら7時過ぎに、十勝岳の登山口である「望岳台」に無事到着。
ちゃちゃっと準備して登りましょう。
ちょっとガスっていて視界がイマイチだが、風は弱く気温も高い。
サイト「てんきとくらす」の「登山指数A」を信じて、いざ進め!
「十勝岳トレイル」のコースになっているのは、上の地図の「避難小屋」までであるが、せっかくここまで来たんだから、どーんと頂上まで行ってみよう。
最初のうちは走ろうと思えば走れる感じの道ですね。
斜度もそうでもないし、速い人はダーッと駆け上がっていくのだろうなあ。
私は頂上まで行くことを考え、ここで無駄に体力を使いたくなかったんで、ずっと歩き通しであったが。
ずっと歩きとは言っても、太ももや腰に手を当てた「パワーウォーク」でずんずん進みます。
上の方はガスに隠れていて見えないのだが、大丈夫なんだろかね。
だんだん、石ころや岩が目立つようになってきましたね。
歩いていても、ところどころ石につまづく場面があったりして、私の技量ではここ走るのは無理そうだなあと。
にしてもガスガスで視界が悪く、この先が不安になってくる。
「避難小屋」到着。
ここまでが「十勝岳トレイル」のコースになります。
望岳台からの所要時間は約40分。
1時間ぐらいはかかるかなあと思っていたが、予想よりも早く着きましたね。
この程度の時間ならレース本番でも無理せず、歩き倒してもいいのかなあと。
若干ガレているところもありますが、壁のような激坂もなく、これならポールなしでも十分行けるなと。
「なんだ山岳パート楽勝じゃん」と、このときの私は愚かにも思っていました。
さて「コース下見」はここまでにして、こっからは純粋な「登山」になります。
こっからが登山本番だと、だんだん傾斜は急になり、道は岩だらけになっていきます。
汗はポタポタ落ちてきて、写真を撮る余裕もないですな。
雪渓が見えると、北海道の夏山だなって気分になりますな。
もっとも私のような北海道の寒冷地に住んでいると、「今は夏だけど、もうちょっとしたらまた雪が降るのか。嫌だなあ」って気分になってしまうが。
ゴツゴツした急斜面を過ぎると、突然平らなところが現れ、稜線が見えてきます。
んでもって、視界も晴れ、頂上が見えてきましたよ〜!
と、今、写真で振り返るとポジティブに思うが、こんときの私は「まだ頂上までこんなにあるのか」とゲンナリしてきましたがな。
稜線はいいんだが、頂上まで岩だらけの急斜面を登んなきゃならんのね。
「これ、登るのはいいんだが、下りめっちゃ怖いんじゃないか」と、ビビリの私は、登る前から不安になるのであったが、ここまで来たからには登るしかない。
どーんと上まで行ってやろうじゃないか。
この前の雌阿寒岳と違って、上の方は天気がよくてよかったですな。
風も弱く、頂上付近のひんやりした空気が心地よい。
ちゃちゃっとてっぺんまで突き進むのだ。
望岳台から2時間ぐらいで山頂到達。
今まで2000m以下の山にしか登ったことがない私であったが、人生で一番高いところに登ったぜ!
十勝岳は標高2077mの山ですが、望岳台ですでに標高930mありますので、獲得標高は1147mと、初心者の日帰り登山にはちょうどいいんじゃないかって気がします。
頂上でのまったりした時間はいいですな。
こうして、自分が登った道を振り返るのが登山の醍醐味なのかもしれん。
月並みではありますが、こうした大自然の中に身を置くと、自分の存在などちっぽけなものに思え、下界での日常の悩みなどどうでもよくなりますな。
「悩んだときは山に行け!」なのである。
頂上でつかの間の幸福な時間を過ごしていた私でありましたが、「この後、岩だらけの急斜面を降りなきゃならないのか、嫌だなあ」と、現実に引き戻されるのでありました。
(つづく)