唐突であるが、私は登山にあんまりよい思い出はない。
時はさかのぼり、私が社会人1年目のとき。
同期に学生時代山岳部だった奴がいて、酒の席で、ノリと勢いだけで「いいっすね!是非一緒に山に行きましょう!」と意気投合した。
しかし、彼はそれを社交辞令とは取ってくれなかったようで、いきなり本格的な登山計画を持ち出してきて、正直、私は結構引いた。
でもって、暑寒別岳や羊蹄山などの登山を彼と共にしたわけだが、はっきり言って、いろいろな意味で彼とは「合わなかった」。
今も、私は人間的に全くできていない人であるが、当時は今に輪をかけて人としてなっていなく、今と比べてそこそこ知性はあれど、共感力などの人間性については、はっきり言ってチンパンジーレベルであった。
山行中の「ああしろ、こうしろ」などの彼の発揮するリーダーシップが心底受け入れられず、完全に登山が嫌いになった。
これって、学生時代「その教科の先生が嫌い」って理由で、その科目自体が嫌いになるようなもんだね。
でもって、20代のころの私は、今と違って「運動大嫌い」なぐーたらインドア生活を送っていて、体重75kgの立派な「生活習慣病予備軍」であった。
そんな私が、いきなり5時間も6時間にも渡るハードな山行に耐えられるわけもなく、景色に感動する前に、両脚と気がおかしくなってしまいそうになった。
というか、実際に気がおかしくなって、「氏○!」とか「地獄に落ちろ!」とか、リーダーへの恨み節を頭の中でつぶやきながら、気の遠くなる道のりを、ただ機械的に脚を進めていただけであった。
去年の大掃除で、当時の登山の写真がなぜか出てきたわけだが、パンパンの顔で腹が出ている当時の私に「誰やコイツ?」となり、更には大っっっ嫌いだった元山岳部の彼のことを思い出し、秒殺でビリビリに破いて捨てた。
私は過去を振り返らずに、今を生きる男なのである。
当時の私はもう死にました。
あれから25年。
どういうわけか、私は「トレラン熱」にうかされている。
5/23に行われる予定だった「カムイの杜トレイルラン」が7/18にスライド開催されることになり、一回ぐらいはどっかでトレランの練習をしなくちゃなあということで、本日電撃的に「山再デビュー」を果たすことにしたのである。
さて、どの山に登ろうかなあと。
とりあえず、釧路から近くて、初心者向けで、景色が良くて、「日本百名山」のひとつである「雌阿寒岳」がいいんじゃないかあ。
そう昨日思いつきで決めて、テキトーにYouTubeで予習して、なんとなく山に向かう決心をしたわけである。
トレランシューズはASICSのものを、でもって、トレランリュックと雨具はNORTH FACEの本格的なものを持っているが、それ以外の装備については、ズボンはユニクロのジョガーパンツ、グローブはそこら辺で売っている軍手とかなりテキトーである。
まあ、靴とリュックと防寒着を備えた雨具さえしっかりしていればなんとかなるでしょう。
一応、給水用のソフトフラスクと、万が一のためのファーストエイドキットも買っておきました。
|
|
雌阿寒岳には3つの登山コースがあります。
あんまり考えずに、一番メジャーで初心者向きと言われている「雌阿寒温泉コース」で登って、でもって、行きと帰りで同じ道を通るのも芸がないので、下りは「オンネトーコース」を使い、オンネトーからは林道を通って雌阿寒温泉へと戻ります。
YouTubeで予習した感じ、登山道は雌阿寒温泉コースもオンネトーコースも、木の根っこや岩だらけで、斜度もキツく、私の技術ではとても走れないので、せめてオンネトーからの林道ぐらいは走っておこうかという作戦である。
さて、作戦も決めたところで、翌日に備えて寝ましょう。
早起きするため、小学生のように夜9時にさっさと寝ます。
おはようございます。
2時起きです。
ここまで早く起きる必要はないんじゃないかと思うかもしれないが、あまり人のいない時間帯にとっとと登っておきたかったので、5時前には入山できるように、超早起きをしたわけでありました。
雌阿寒岳は人気のある登山道なので、人混みの嫌いな私は、混む前に行動したかったのね。
3時釧路発。
曇っていて、寒いですな。
車はヒーターをつけないとやってられない感じ。
天気予報チェックしたら、山頂の気温は5度ぐらいを予想していたので、防寒大丈夫かなあとちょっと心配になってきた。
まあ、でも、実際に行ってみて、あまりに寒くてダメだったら、そのとき引き返せばいいだろう。
ここまで来て、ウダウダ考えても仕方がない。
行きの道は、道路中鹿だらけで、なかなかのストレスであった。
国道240号線の朝晩は鹿だらけで、うっかりすると衝突することもあるので、慎重に運転しよう。
「寒いし、曇っているし、嫌だなあ。霧が濃かったらどうしよう」なんて思いながら運転していたら、足寄町に入っていきなり晴れ出してビックリした。
めっちゃええ天気やん!こりゃあ楽しい登山になりそうだぜ!
4時半、雌阿寒温泉駐車場到着。
さすがにこの時間帯だと、駐車場もガラガラだった。
さて、現在地を確認して、登山口に入りましょう。
4時40分、入山名簿に名前を記入して、期待半分、不安半分の中、私の25年ぶり5回目の登山が始まります。
(つづく)