ひとり北オホーツクマラソンも半分を過ぎ、再び日差しが強くなり、水の消費量が多くなるところです。
しかし、コース上に唯一あると思っていた自販機が存在しなかったことに気づき、水分の補給を断たれ、灼熱のバス待合所の中で途方に暮れていた私なのでありました。
多分、安全策を取るのであれば、このまま国道238号線を南下して、最短距離で浜頓別市街地を目指すべきなのであろう。
これで10kmぐらいのショートカットになる。
しかし、私は事前にコースマップを入れていたガーミンさんのナビに従い、運命の分かれ道を右に曲がり、茨の道へと進むのでありました。
せっかく遠いところまで来たのだから、自分が最初に決めたことを最後までやり遂げたかったのだ。
ここで、水が「もう1リットルしかない」と考えるからダメなんだ。
「まだ1リットルもある」とポジティブに考えよう。
計画的に残った水を使うのだ。
補給食のゼリー飲料の中にも水分は含まれているわけだし、何とかなるに違いない。
何とかなる。何とかなる。絶対何とかなる!!!!
わたしゃ、困ったときはこうつぶやいて、無理にでもポジティブな状態に持っていきます。
国道から外れると、民家は全くと言っていいほどなくなり、車通りもさっぱりなく、気が狂いそうな細かなアップダウンを繰り返す道になります。
まだエサヌカ線の方が、バイクが頻繁に走っていただけ、寂しさは紛れましたね。
もうここまで来ると、「いやー、これこそ北海道らしい大自然が満喫できる素晴らしい道だ!」などと思う余裕などゼロです。
余計な考え事をして脳のエネルギーを消費させないように、心を無にして走ります。
そして、36kmを過ぎた辺りでしょうか。
右手に場違いな大きな建物が見えました。
ついに私は頭がおかしくなって、幻まで見えるようになったのかと思いながら、ふらふらと吸い込まれるように建物の方に近づきます。
まさかの水場発見!!!!!
今までの人生の中で、蛇口を見て、こんなにありがたいものだと感じたことはなかった。
ありがとう、こんなところに水道管を引いてくれた方。
「果たしてこの水は飲める水なのか?」という疑問はあったが、今はそんなことを言っている場合ではない。
フラスクとペットボトルに満タンに水を入れるのだ。
んでもって、ついでだから頭から水をぶっかけよう。
もう北島康介ではないが
「チョー気持ちいい!!!!!」
という言葉しかなかったですね。
サウナの後の水風呂の気持ちよさを10とすると、このときの気持ちよさは100000000ぐらいはあったと思います。
ちなみにこの建物は「開明コミュニティセンター」という施設でした。
公民館みたいなところであるが、きっとほとんど利用されることなどないのだろう。
このときも、もちろん無人でありました。
さようなら、開明コミュニティセンター。
ありがとう、開明コミュニティセンター!
2年前ここを走っていたときは存在に全く気づかなかったが、浜頓別にはこういうありがたい施設が存在するのである。
もし、私が将来総理大臣になったら、絶対にここに新幹線を通して、地域振興の柱にする。
例え公私混同と言われようが、必ず新幹線を走らせて、開明地区の皆様に喜んでもらおうと心に誓ったのでありました。
最大の懸案事項である水分について解決したら、あとはもう精神的に楽チンでしたね。
これで50km走り切れることは間違いないと。
人間、気持ちに余裕ができると、走りも軽くなってくるというものです。
多分、この道は人や車が通るよりも、牛が横切る頻度の方が高いのではないだろうか。
どこまで行っても同じような風景であるが、それが北オホの魅力なのでもある。
ただ、大会だったら、数キロごとに存在するオアシスのようなエイドが存在しなかったのは寂しさを感じましたね。
特に後半のエイドでは、遠くから「○○さーん!」と名前を呼んで応援してくれて、たくさんの元気をもらったものです。
さて、2年前の大会同様に、この日もクソ暑かった浜頓別。
どうにか5時間以上かけて、多目的アリーナへと戻ってきました。
大会本番とは違って、派手なゴールゲートは存在しませんが、大会MCの「おかえりなさい!」という声を脳内再生して、無事50kmの道のりを走り切りました。
調子がよろしくない中でも、最後までほぼイーブンペースで走れたのは収穫でありましたが、「来年これの倍走るのか」と思うと今からゲンナリするものがあります。
好きでやっているはずなのですがね。
大会ではゴール後、「シーフードカレー」が振る舞われるので、町内の温泉施設のレストランで「ほたてカレー」を食おうと思ったんだが、残念ながら夜の営業はやっていなかったのね。
仕方がないので、翌日、釧路に戻って、道東を代表するカレーショップ「インデアン」の「シーフードカレー」を食べることによって、ひとり北オホーツク50kmマラソンの締めくくりとしました。
シーフードカレーを食べるまでが、北オホーツク100kmマラソンです。
去年今年と、コロナ禍でマラソン大会が中止になりまくっている状態ではありますが、こうして思い入れのある大会の地をひとりで走るのも、また違った楽しみがあるのではないでしょうか。
特に感じるのは、大会では「多くのスタッフの皆様に支えられている」ということですね。
エイドのないセルフ補給は、こんなにしんどく絶望的な気持ちになるものなのかと。
改めて、多くの人達のおかげで、ランナーは大会で「走らせていただいている」ということを痛感した、今回の50kmの道のりでありました。
来年は必ずや浜頓別の地で、多くのランナーの皆様、ボランティアスタッフの皆様に支えられていることに感謝しながら、たくさんの「ありがとう」を伝えて走ることができるようになると信じています。
そして、本記事を読んで「浜頓別いいかも?」と思った皆様と、実際に来年、この素晴らしい浜頓別の地でお会いできることを今から心待ちにしております!
ここまでご清聴ありがとうございました。
さようなら。